わたしがよく行くスーパーでは、最近お掃除ロボットが活躍している。
ドラム缶のような形のそれは、ピロンピロンと音を鳴らしながら、通路をゆっくりと動いてお掃除をしてくれているらしい。いつもの小さなスーパーで初めてお掃除ロボットが動いているのを見た時はびっくりして、家族に「あのスーパーにお掃除ロボが投入されてた!」と報告したし、実際に動くロボを見た息子たちは「すげえ!」と興奮していた。
ロボの出現に沸いたのはわたしたちだけではなかったらしく、どうやら充電中のロボに触る子どもたちが続出したようで、日が経つにつれ店の端にある充電コーナーには「充電中は触らないでください」とか「今日はお掃除ロボットはいません」とかの札が立てかけられるようになっていた。聞いたところによるとロボを探し回って店内を走る子どもたちもいたらしい。
さて、ロボがスーパーで働くようになって数ヶ月たってわかったことだが、奴は意外と幅を取る。
まず、狭い通路をまっすぐではなく、ジグザグで動いてお掃除をするため、自分が行きたい方向にロボがいた場合、うまく追い抜くことができない。しかも、奴の動くジグザグは気まぐれで「よし、右から追い抜こう」と思ったらふいに右に来たり、右端を攻めていたのでこちらは左端を歩こうとしたら、ぐいっと左に来たりする。車で例えるならば車線変更のようなものを、ろくに後ろを確認せずにするのだ。車なら間違いなく事故を起こしているだろう。
最も困るのは、通路の向かいから別のお客さんが来た時だ。
この前はわたしとおばあさんでお掃除ロボを挟む形で、2人で「あらあら」と言いながら、とりあえず揃って端っこに立ちロボを先に通すことにした。
ロボの動きを優先している間、そのおばあさんが「ふふ、お掃除してくれるのはいいんやけどねえ」と、にこやかにロボを見ながら言うので、わたしも同じく「ふふふ」と、うなづきながら笑った。ロボが通り過ぎて「では」と、お互いに会釈をしてすれ違った。
まるで見知らぬおばあさんと雨宿りをしたような平和な一瞬を過ごすことができて心が和んだが、冷静に考えるとなぜわたしたちが突っ立ってロボを通してあげているのだろう…と思った。ロボって普通人間の動きを感知したら止まったりするよね?
ちなみに、この前はやはりおばさんが困った顔で、通路の端にじっと立ちロボが通り過ぎるのを待っている姿を見かけた。おじいさんが、追い抜かしたいのに追い抜けなくてウロウロしている姿を見かけたこともある。
わたしたちの苦労や困惑を知る由もないお掃除ロボが鳴らすピロンピロンという音が、自由気ままに売り場を歩く鼻歌に聞こえた気がしたのだった。