この前の仕事中、休み時間に次の授業の準備をしていたら、何度か話したことのある女の子が「もっちゅりん、もう食べた?」と話しかけてくれた。もっちゅりん…それは、わたしが1年前から食べたいと思いながら未だに実物すら見たことのないミスドのアレじゃないか!
聞くと、その子はお母さんが予約してくれていたおかげで、今年のもっちゅりんを全種類食べることができたという。
食いしん坊なわたしは内心(わあ、全種類?!めっちゃいいやん、いいなー!)と大興奮だったけれど、もう大人だし一応仕事中なので冷静に「いいなー!」とリアクションしたつもりが「…先生、めっちゃ食べたいんやな?」と、即座にわたしの内面を見透かされてしまった。
ばれてしまったか…というわけで、実はめちゃくちゃ食べてみたくてアプリを入れたものの予約申し込み期限が終了していて出来なかったこと、実物すら見たことがないこと、1年前から食べたいと願っていることを打ち明けると、彼女が全3種類の味をレビューしてくれた。
曰く、とにかくもっちゅりんはめちゃくちゃ美味しいのだけど、みたらしは「手がべたべたで食べるのが大変」、きなこは「おもちっぽい」、そしていちごは「クリームがふっわふわで甘酸っぱくて一番美味しい」ということだった。「だからな、これから食べるなら絶対いちごがおすすめ!」と、ちょうど次の授業の始まりを報せるチャイムと共に彼女はそうレビューを締めくくって去って行った。
この時までもっちゅりん未経験のわたしが一番気になっていたのはみたらしだったのだけど、あまりにも彼女のレビューが上手だったため「食べるならいちご」という気持ちになっていた。うう、もっちゅりん。いつか絶対食べてやるぞ、もっちゅりん。
さて、それからしばらく経ったある日、仕事が早く終わったので帰る途中の駅で降りてお買い物をしていたら、そこにミスドがあった。
あっ、ミスドだ!…でも、どーせもっちゅりんはないんでしょ?実物すら見たことないんだからさ、などと若干やさぐれながらも一応覗いてみると「もっちゅりん販売中、1グループ・1種類につき1個ずつまで」などと書いてあるではないか。
きゃー!ついに、初もっちゅりん…!!
というわけで、数名できていた列に並んでよく見てみると、売り場の棚にはもっちゅりんがずらりとたくさんあった。どうやら、この時まだ11時すぎと早かったのと個数制限があったため、ちょうどいいタイミングでもっちゅりんと出会うことができたようだ。ただ残念ながらもっちゅりんのいちごだけ売り切れの表示があった。
がーん、一番食べたかったいちごとの対面は叶わず。いやいや、楽しみはとっておこう。とりあえずもっちゅりんとやらを食べることができるのだから。
トレーとトングを手に持ち大人しく並んでいると、わたしの前に並んでいた男性が突然振り返り「あの、もっちゅりんには何味があるのでしょうか?」「もっちゅりんは全部で何種類でしょうか?」と矢継ぎ早に尋ねてきた。そこで、本来なら全部で3種類あるけれど今はみたらしときなこの2種類だけしか買えないことをお伝えした。
今日はすでに売り切れのいちごが一番美味しいらしい、ということは一瞬悩んでから結局伝えることをやめた。それは、わたしと同じく初もっちゅりんであろうこの男性にも共有すべき情報かも知れないけれど、今手に入らないものを残念がらせても仕方がないと思ったからだ。彼にはもっちゅりんが買える喜びだけを味わってほしい。ちなみに、これは食いしん坊としてのマナーである。
さて、順番が進みついにわたしがもっちゅりんをトレーに載せていい時が来た。もっちゅりんとの御対面である。

初もっちゅりん
このイラストはかわいいのか、かわいくないのか。ドーナツなのになぜ薄桃色をしているのか。実物を初めて見ると「もっちゅりんってなんやねん…」と、様々な感情が湧いてきたけれど、とりあえずやっと買えたのだ。これで、わたしはしばらく家族の中で「あのもっちゅりんを買えた者」という英雄として扱われることだろう。
ところが、帰ってきた家族の中でもっちゅりんに喜んでくれたのは息子(11)だけだった。息子(14)と夫は「もっちゅりん?いらんから食べていいよ」と言うし、夫に至っては何をそんなに騒いでるのかといったやや冷めた目線すらある。2人の反応にすっかり肩透かしを食らったわたしが「こういう流行りに乗るのも人生の楽しみなんや!!」と、言うと息子(14)と夫はやっと喜ぶふりをしていた。
夕食を食べ終わり、いよいよ、もっちゅりんを開封することになった。その前に記念に写真を撮らせて、と言うと息子が「もっちゅりんを撮るなら、こうやろ」と言って、セッティングしてくれた。

見つめるもっちゅりん
照れるもっちゅりん
購入した時は、かわいいのかかわいくないのか分からなかったイラストも、息子が置いた通りに撮ると表情が出てきてなんだかかわいく見えてきた。なるほど、これが若い感性の映えというやつか。
さて、わたしが買えたもっちゅりんはたった2個。というわけで、4人家族なので1つのドーナツを4つに分けて食べるしかない。

試食やないか
果たしてこれは「もっちゅりんを食べた」と言えるのだろうか?これでは「もっちゅりんの試食をした」と表現する方が正しいのではないか、などと思いつつ、パクッと食べてみると、みたらしの甘じょっぱさにもっちもちの食感。これは、ドーナツじゃなくてもはやおもちだな。ただ、もっちもちだけどプルンとした食感もあるため、もっちゅだけではなくもっちゅりんというネーミングになったのだと納得した。きなこも4分の1個なので食べ終わるまで一瞬だった。うん、美味しい。
食後、続く言葉は家族の中で一致していた。
美味しいけど、もういいや。
美味しいのは間違いないんだけど、わたしはもっちゅりんに恋焦がれすぎたのかも知れない。もし、もっちゅりんが普通に買えるとしてもわたしはやっぱりオールドファッションハニーの方が好きだな。
というわけで、我が家のもっちゅりん狂騒曲は静かに幕を下ろした。
ちなみに、わたしにもっちゅりんの美味しさを語ってくれた子とはあの日以来会えないままなので「もっちゅりん食べたよ」という報告はまだできずにいる。また、さきほどもっちゅりんについて調べたら、いちごは6月末終了で、各ショップの原材料がなくなり次第販売終了とのことだったので、彼女が一番おすすめしてくれたいちごをわたしが食べられることはなさそうだ。
ただ、いつかまた彼女に会えたら「もっちゅりん、美味しかったよー!また食べたいよー!」とテンション高めで伝えるつもりでいる。実際には食べただけで満足してしまったもっちゅりんだけど、あんなに目をキラキラしながら大事な休み時間を使ってまで3種類の味をレビューしてくれたのだ。
美味しいものを教えてくれた相手に対する感謝からつく嘘、これもまた食いしん坊のマナーなのである。







































