わたしはお菓子作りが異様に苦手だが、息子たちはわりとお菓子作りが好きなようで、時々、牛乳を混ぜるだけのクッキーミックスを使って息子たちと一緒にクッキーを作ることがある。
いつも楽しそうに作っているし、喜んでくれていたが、実のところもう少し作りがいのあるものに挑戦したかったようだ。
夏休みのある日、わたしが暑さのあまり溶けていると、息子(12)が「チョコチップクッキーを作りたい」と言い出した。しかも、息子(9)と2人でスーパーに行って足りない材料を買ってくる、と暑い中、日傘をさして2人きりで初めてスーパーへ出かけて行った。「あ、これってはじめてのおつかいやん…」と、わたしが家で心配しながら待っていると、2人はちゃんと自分たちでメモをしていた通りチョコチップやベーキングパウダーなど、必要な材料を買ってきた。
帰宅後すぐに、息子たちはレシピを見ながらテキパキと粉などを計り、あっという間にチョコチップクッキーが焼きあがった。
息子たちから焼きたてのクッキーを食べさせてもらったら、とても美味しかった。わたしはステラおばさんのクッキーが大好きだが、あのステラおばさんのチョコチップクッキーよりも、さらに美味しい。
厚みはしっかりあるのに、サックサクで、ココアの香りがふわっと、チョコチップはたっぷり。
わたしがお菓子作りが苦手なばかりに、これでは「この夏休みはお母さんと一緒にクッキーを作りました」ではなく「この夏休みはお母さんにクッキーを作ってあげました」だ。
余談だが、息子(12)の夏休み課題に家族の紹介をまとめるものがあり「おかあさんの苦手なことってなに?」と、聞かれたのだが、わたしが答える前に「あっ、わかった!お菓子作りやんな?」と、言われてしまった。
う、うん…確かにそうだけどさ…
このままでは、担任の先生にまで知れ渡ることになってしまう!と、何か他に別の苦手なこと…と一瞬悩んだが、本当のことなのでそのまま書いてもらうことにした。だってどうしたっていつも何かしら失敗する。お菓子作りの時にはレシピの文字がなぜか踊って見えると言えば、わたしの苦手さが伝わるだろうか。
「美味しいー!」と、感動しながらチョコチップクッキーを食べていると、息子(12)が「また作ってあげようか?」と言ってくれた。親バカだが息子たちはお菓子作りの天才かも知れない。今こうして書いていても、あのチョコチップクッキーの美味しさが思い出されて、幸せな気持ちになれるのだ。あれは天才の技に違いない。彼らのお菓子作りの経験数は(わたしのせいで)そんなに多くないのだから、天性のものだろうか。
なんて、本当に親バカ全開だ。
そんなことはさておき、あのクッキーは息子たちの「チョコチップクッキーを作ってみたい!」という気持ちが、形になった最高の手作りクッキーだった。こうして息子たちのおかげで、またひとつ夏休みの楽しい思い出ができたのだった。