もう8月も過ぎたが、今年の残暑はまだまだ暑い。予報では10月の終わりまでこの蒸し暑さは引きずられるとも言っていた。
10月だと?!9月の終わりまでしつこく暑さが残るのはもう慣れた。でも10月は…せめて10月からは秋じゃないと困る。年々短くなっていく秋をこれ以上奪わないでほしい。
なぜならわたしは四季の中で秋が1番好きなのだ。
雲が美しい形を作る高い空を見上げるのが楽しい。木々が黄色や赤色になってカサカサと散っていく音さえ幸せを感じる。朝のヒンヤリとした薄い空気も、だんだんと夜が長くなる感じもとてもいい。日ごと冬の冷たい空気を運んでくる秋の風が恋しい。そんな秋が待ち遠しくて仕方がない。
さて、この異様とも言える今年の暑い夏の間にいつの間にかわたしの日課となっていたことがある。
それは、お風呂あがりに水のシャワーを浴びることだ。
わたしは防災も兼ねて毎日お風呂にお湯を溜めるようにしているので、一年中湯船に浸かる。時に入浴剤を入れることもあるので、普段から最後に必ずシャワーをさっと浴びるのだが、ある暑い日が続いた時、ふと思いついて最後のシャワーを水にしたら(その日は一日中暑すぎて水ではなくぬるいお湯のような温度だったが)なんとなくさっぱりとしたので、毎日浴びるようになった。水シャワーと言っても冷たい!と感じることなんてなかったので、高い気温で体がそれだけ火照っていたのだろう。
そんな日々が続いたある夜、いつものように湯船に浸かってぼーっとしていると、外から秋の虫の声が聞こえることに気づいた。
まだ蒸し暑いのに、もう音だけは秋やな
そんなことを思いながら、湯船から出ていつものようにお風呂のガスを切って水のシャワーを肩から浴びたら…あれ?なんか今日冷たくない?あれ?なんかしっかり水じゃない?冷たっ
まるで滝行を思い浮かべるようなピリッとした冷たさにびっくりした。
そうか、もう真夏の峠は過ぎていたのか。
まだまだ暑い日は続くが、どうやらほんのちょっとずつではあるが、季節はわたしの愛する秋に動いているようだ。
水のシャワーを毎晩浴びていなかったら気づけなかったような小さな季節の一歩を感じることができた出来事だった。