わたしのあたまのなか

わたしのあたまのなかの言葉を書きたい時に書く場所。覚えておきたい出来事やお出かけの記録、おいしいものについてもよく書きます。

わたしの自転車

わたしの愛車はYAMAHAのPAS。

そう、電気自転車だ。

もう乗って4年目になる自転車だが、最近後ろのタイヤに空気がいつも入っていないように感じていた。この日も乗る前にたっぷり空気を入れたはずなのに、走って段差を乗り越えるとガタン!と後ろのタイヤにすごい衝撃が来る。走っているうちに空気が抜けてしまったようだ。自転車がなければ不便な土地に住んでいるわたしは、買い物に向かう途中だった道を引き返して、慌てていつもの自転車屋さんに駆け込んだ。

ここの自転車屋さんは、おじいちゃん、おとうさん、娘さんの家族3代で経営されている。この日は、中を覗くと娘さんが店頭にいた。

「あの、すいません。後ろのタイヤなんですけど、すぐに空気が抜けちゃって」と言うや否や「ああ、タイヤ交換しないとですね」と、返ってきた。なんで、すぐにわかるんやろ?と思ったら「まず前のタイヤ見てください。ほら、溝がちゃんとあるでしょ?」と言われた。確かに前のタイヤにはちゃんと溝の模様がある。では後ろは?と目を向けると、おお!今まで全く気付かなかったが、ツルッツルになっているじゃないか!だからすぐにタイヤ交換と言ったのか!と、納得したわたしに「ね?」と、言いながら、店内の奥に向かって「パパー!」と声をかけた。

パパと呼ばれたお店のご主人が「はいはい」と出てきて、わたしのタイヤを見て「うわー!」と、言った。何事かと思ったら、ここまで摩耗されてツルツルのタイヤを見たのは久しぶりだという。

「これは値打ちもんやで」と、小声で言う姿に職人魂を感じた。「すいませんが、お時間ください」と、自転車屋さんは同じYAMAHAの代車を用意してくれた。

先に料金をお支払いして代車に乗ろうとしたら「あの、自転車はお仕事で?」と、聞かれた。「いえいえ、お買い物にあちこち行くだけで」と答えると、次は娘さんが「後ろにお子さん乗せて?」と、続いたので「もう大きくなったので、ここ数年は乗せてなくて、わたしだけです」と、聞かれるがままに答えると、自転車屋さんの父娘は「こんなに乗ってよくパンクさせへんかったね」「上手に乗ってくれたんやわ」と、修理台に載せられたわたしの自転車にまるで言い聞かせるように言った。

今まで特に何の整備も意識もせずに乗っていたわたしの愛車だったが、それを褒められて嬉しい気持ちのまま一旦家に帰った。タイヤがあんなにもツルツルになるまで乗り回していたとは、自分でも気づかなかった。

わたしは周りに言うと「あんなところまで?」と、驚かれることもあるくらい、わりと遠くまで自転車で行くので、相当負担をかけてしまっていたのだろう。遠くまでは行くがスピードを出すことはあまりないので、タイヤが消耗されていることに体感的には全く気づかなかった。今回空気が抜けることがなければ、出先でパンクしたり、横滑りして転んでいたかも知れない。あぶないところだった。

さて、引き取りのため自転車さんに再び行くと、そこにはあちこち整備されて、すっかり健康になったのかシャンと姿勢よく立っているように見えるわたしの自転車がいた。

「タイヤは純正のブリヂストンですからね」と、ご主人が言って、わたしはその時初めて「自転車のタイヤってブリヂストンやったんや!」と、知った。チェーンも傷んでいたので直してくれたそうで、最後にスタンドに油を挿してくれた。

他に気になるところは?と言われたので、充電が何%残っているか画面が薄くなってて見えにくいと伝えたら「液晶は修理に出したら高くつくから、やめときましょ。こまめに充電してください」と、言われた。職人だけど不要な出費は抑えて下さるから、ここの自転車屋さんはいつも信用できる。

真新しい黒々としたタイヤを履かせてもらったわたしの自転車はスイスイと進みとても気持ちよかった。またこれからどこまででも遠出をしてやろうぜ、と、ペダルを漕ぎながらハンドルをキュッと握ったのだった。