わたしには、仲のいい叔母がいる。
その叔母は、わたしの母の妹で、長い間わたしの家族と、叔母家族は、同じ団地の同じ棟に住んでいたこともあり、叔母はわたしが幼いころから大層かわいがってくれた。
叔母は、わたしに息子(14)が産まれた時は、家に来てわたしが楽できるようにと晩ごはんを作ってくれたり、なかなか会えない時でも、息子たち宛に毎年クリスマスにはカードを送ってくれるなど、離れていてもいつも気にかけてくれていたのだった。
さて、そんな叔母の子ども、つまりわたしのいとこに、先日赤ちゃんが産まれた。ちなみにこのいとこはわたしより10歳年下で、叔母に似てとても美人だ。
母と早速出産祝いを一緒に買いに行って、いとこが里帰り中の叔母の家に会いに行く日取りが決まった。
わたしは、自分自身もそして息子達も叔母にとてもかわいがってもらったので、出産祝いにはたくさんお洋服やおもちゃを買いたかったのだけど、あまり一気に買っても気を遣わせるから、と、父と母に止められてしまった。
そんなわけで、0歳から使えるアンパンマンのおもちゃセットだけを買ったのだけど、ふと大好きだったぞうさんのことを思い出した。
ぞうさん、とは、わたしが産まれた47年前に、産まれたばかりだったわたしのためにと、叔母が旅行先の軽井沢で買ってきてくれた赤い紐のついた木彫りのぞうさんのおもちゃのことである。
わたしは幼いころから、紐を引いて一緒に歩けるこのぞうさんのおもちゃが大好きで、これまでずっと大事にしてきた。
結婚をして大阪の枚方から京都に引っ越してきた時も「いつか、自分に子どもが産まれたら」と大切にしていたし、実際に、その立派な木彫りのぞうさんはとても頑丈なので、息子たちも幼いころは遊ばせてもらった。
そんな息子たちも大きくなり、今度は「いつか息子たちに子どもが出来たら」と、おもちゃ入れにしまっていたのだけど、ふと、これは叔母にとっての待望の初孫であるいとこの子ども(いとこの子どもは何と呼ぶのだろう?と調べてみたら、従甥「いとこおい」と呼ぶらしい)に、受け継ぐべきではないか?と、思った。
幼いころから、いつも身近にいたぞうさん。
最近ではぞうさんを二階のおもちゃ入れに置いていたので、洗濯物を干す時はいつも目に入るところにいた。
正直なところ、大好きなぞうさんを手放すことにさみしい気持ちはあったけれど、このままわたしが持っていても、ぞうさんはしばらく遊んでもらえないだろう。それならば、これからすくすくと育ってくれることを願って、叔母の大事な孫である従甥に手渡すべきなのだと考えた。
叔母の家に行く前日の夜、久しぶりにぞうさんを抱きあげて、大好きだったすべすべの手触りの木の体をたくさん撫でた。やっぱり、手放したくない。でも、ぞうさんは、子どもに遊んでもらうべきなんだ。
たくさんのありがとうを心の中で言った。知らない人にあげるわけじゃないし、きっと叔母も喜んでくれるに違いない。
久しぶりに叔母に会った当日「これ、覚えてる?」と、ぞうさんを見せたら「これ、私が買ったやつやんか!」と、とても驚いてくれた。わたしがずっと大切にしていたとは知らなかったらしい。
「これは従甥くんに遊んでもらうべきやな、と思って」と、アンパンマンのおもちゃセットと一緒に手渡すと、叔母は「まだ持ってくれてたんや」と、いとこよりも「ありがとう」と、とても喜んでくれた。
いざ手からぞうさんが離れてしまうと、さみしい気持ちももちろんあったけれど、嬉しそうな叔母の顔を見たら「これでよかった」と、ちゃんと思えた。
そんなわけで、47歳のぞうさんは、わたしの手から離れて、やわやわでほわほわのかわいらしい赤ちゃんの元へと受け継がれていった。わたしや息子たちがそうだったように、あの子が立って歩くようになった時には、きっとぞうさんも一緒にコロコロとついて行ってくれることだろう。

今までありがとう
大好きなぞうさん