2週間ほど前、息子(14)が「バナナ食べたいねんけど買ってきてくれへん?」と、言った。息子は果物と言えば、梨といちごとぶどうとみかん、くらいしか食べない。りんごやモモにはアレルギー症状が出るため食べられないという理由もあるけれど、元々バナナはそこまで好きではないはず、だった。
その日以来、息子はよくバナナを食べるようになり、これまではパンかおにぎりだった朝ごはんはバナナばかりになった。それだけではなく、学校の帰り道にお腹が空くのでバナナを持っていきたいからバナナケースを買ってきてほしい、とまで言い出した。
なんで、急にそんなバナナ好きに?でも、そういえば息子は夫がお土産に東京ばな奈を買ってきた時とても喜んでいた。わたしが知らなかっただけで、彼の好物はいつのまにかバナナになっていたのかも知れない。
ところが、いざダイソーでバナナケースを探してみたら意外とこれが売っていない。あれ?バナナケースって100円で買えるものだと思ってたんだけどな…。ダイソーを3軒まわってみるものの店頭にない。思い切って店員さんにお尋ねすると「そういえば、最近見かけませんね」と、言われた。
もしかして…、息子のバナナ好きって流行の最先端だったりするのかしら?わたしの知らないところでもう何度目かになるバナナブームが来てるのかな。見ないから分からないけれど、TikTokとかインスタとか若者が生きる世界では、今バナナがアツいのかも知れない。
けれど、こちらも息子のためにバナナケースを何としても買ってあげたい。ホームセンターやスーパーでも探したけれど売っていなかった。バナナの形をしたあのプラスチックのバナナケースって見慣れたものだったけど、あれってレアだったの?
そんなことを考えながらダイソーとは別の小さな100円ショップにダメ元で入ってみたら、売り場のすみっこでバナナケースを見つけた。おお、君はこんなところにいたのか!
やっとバナナケースを手に入れたことを早く言いたくて、息子(14)が帰ってくるのを待っていたら、先に小学校から帰ってきた息子(10)がテーブルの上のバナナケースを見て言った。
「お母さん、最近お兄ちゃんがなんでバナナよく食べるか知ってる?」
「好きやからじゃないの?」
すると息子(10)は、ふふふ、と笑いながら「ちゃうねん」と、言った。
どうやら息子も兄が突然バナナを毎日食べるようになって「そんなに好きじゃないはずやのにな」と、不思議だったらしい。そこで、2人でお風呂に入っていた時に、ふと兄に尋ねてみたところ、毎日バナナを食べるとあたまがよくなるという研究結果を何かで見たから食べてる、と教えてくれたそうだ。
「賢くなるから、食べてたんや!!」と、わたしが思わず笑うと「それだけじゃないねん」と、息子は笑いをこらえながら言った。「バナナ食べたらな、イライラもおさまるって聞いたから食べてるねんって」と。それを聞いて、わたしは思わず「か、かわいい…!」と、身もだえてしまった。
そう、絶賛反抗期中の息子は山あり谷ありの日々なのだ。
今日はちゃんと返事をしたな、と思えば、次の日の朝にはため息しか返ってこなかったり、ひどい時には「うるさ」と、小声で言ってきたり、チッと小さな舌打ちまでしてくる。かと思えば、お友達の話を笑いながら教えてくれたり、わたしがあたまが痛いと寝込めばあたまを優しく揉んでくれたりもする。
あの子も、上がったり下がったりする自分のイライラをコントロールしたかったんや…。それに、前に懇談で「このままやと高校もしんどいよ」と担任の先生に言われたこと、ちゃんと気にしてたんや…。
そう思うと、バナナを食べていた息子の姿が急に健気に思えてくる。好きだから、というのもあるかも知れないけど、急に食べ始めたのには、息子なりの理由がちゃんとあったのだ。
まあ、バナナを食べただけで、あたまがよくなるわけではないので、そこに頼るところがすでにアレではあるけれど…。
でも、自分でもどうしようもない思春期を、なんとかしようとしたんだな、と、思うとかわいくてかわいくてたまらない。
そんなわたしの姿を見て「お兄ちゃんに「かわいい」って言ったらあかんで。笑ったらめっちゃ怒ってたから、またイライラするやろうし」と、息子(10)が釘をさしてくる。
そうやね、息子のイライラのあおりを受けるのって、わたしと君やし。ここでヘソを曲げられてバナナを食べなくなってしまったら、せっかく手に入れたバナナケースが役に立たなくなってしまうし。
でも…、やっぱりかわいすぎるではないか。
