わたしのあたまのなか

わたしのあたまのなかの言葉を書きたい時に書く場所。日々のこと、美味しいものや旅日記、好きな海外ドラマについても書いてます。

●プロモーションが含まれるページもあります

やめられない癖のはなし

 

誰しもやめられない癖が何かしらあると思う。特にそれは年齢を重ねれば重ねるほどやめることが難しくなってくる。わたしのやめられない癖とは、骨をぼきぼき鳴らしてしまうことだ。

この悪い癖の始まりは、小学4年生の時に一番仲のよかった友人から「指をぼきぼき鳴らしてみたいねん。一緒に練習せえへん?」と、誘われたことからだった。

 

友人とわたしは棟は違えど、同じ団地内に住んでいたので、それからは毎日の下校時にそれぞれ指をくねくね曲げたりひっぱったりして、どうにか指の骨を鳴らそうとした。小学生というのは、どんなにつまらないことでも全力でやってしまうものだ。あのころのわたしたちは、骨を鳴らすために無駄に一生懸命だった。

ある日、友人が「家でやってたら鳴った!」と、言って、朝学校で会うなりその時と同じように中指を親指で折り曲げてぐぐっと押すと、その白くて細い指は「ぽき」と、軽くて高い音を鳴らした。わたしは、心の底からうらやましかった。しかも、友人は「鳴ったらめっちゃ気持ちいいで」と、言う。

元々は誘われて始めたことだけど、いつの間にかすっかりわたし自身も指を鳴らしたくなってしまっていた。わたしがまだ指をふにふに曲げているだけの間も、友人は、着実にステップアップして中指に続いて薬指まで鳴らせるようになり、ついには左手と右手の指を組んで反らせて「ぼき!」と大きな音を鳴らせるようにまで成長していた。

 

そんなある日、いつものように、団地の中の分かれ道のベンチに座って喋りながら指を曲げていたら、ついにわたしの中指も「ぽき」と、鳴った。友人は自分のことのように喜んでくれて嬉しかったし、指の骨が鳴った瞬間わたしの中に稲妻が走ったようで、それが忘れられなくなった。

それからのわたしの成長は目まぐるしく、あっという間に親指以外の指が鳴るようになり、ついには股関節や足首まであらゆる場所がぼきぼきと音をたてるようになったのだ。特にわたしの指の骨の音の大きさは友人の「ぽき」と、いうかわいらしい音とは比べものにならないくらい「ぼき」「ばき」と、迫力ある音が出せるようになった。

このころになると、周りのお友達や、親からも「指鳴らしたら太くなるで」とか「癖になるからやめた方がいいで」と、言われ始めたのだけど、わたしは音が鳴るのが気持ちよくて一向にやめられなかった。

いつものように、指を鳴らしながら2人で下校していると、友人が全然指の骨を鳴らさない。聞くと、癖になるからやめなさいと、お母さんに叱られたという。友人は指を触りそうになっては「あかん!」と、言ってやめて、そこから一切鳴らさなくなった。彼女がやめるならやめようと思ったものの、意志の弱いわたしはついつい鳴らし続けて、こうしてやめられない癖となってしまった。

今では、親指から薬指まで鳴らない指はないし、手首、ひじ、首、ひざ、足首、腰、背中、あとは足の指までばきばき鳴らせるようになってしまった。両手が使えない状況でも片手だけで指を鳴らせることが出来るし、足の指は手を使わずとも、床にぐいっと押し付けるだけで、ぼきぼき鳴る。気がつけば、いつも体のそこかしこから「ぼきぼき」と音がたてられる人間になってしまった。

昔と比べて指がごつくなってしまったので、たまに本当にこの癖を治したいと思うのだけど、もう今さら治す方法もわからない。特に指は、物を書いたりパソコンを触っているとつるような感覚になるので、鳴らさないと気持ち悪くなってしまうほどだ。

あの時、友人のように固い意志でこの癖をやめていればなあ…と、思いながら、ここまで書いて指が疲れたので、わたしはこのあと思う存分指をぼきぼきと鳴らしてしまうのであった。