ここのところ読んだ本をご紹介したい

小さな車で、ゆるり豊かなひとり旅
/野外のもりこ
わたしが野外のもりこさんを知ったのは、2、3年前のことだろうか。
たまたまYouTubeで流れてきた動画で知り、あまりにもシンプルで美しい映像に最後までそのまま見てしまった。もりこさんの相棒のミニバンで、気ままに楽しむ小さな冒険の様子を眺めていると、いつもゆったりと満ち足りた気持ちにさせてもらえる。
動画には、もりこさんの顔や声は映らない。そこに流れるのは、目的地までの車窓風景、もりこさんの後ろ姿や横顔、キャンプサイトの風景や、工夫してリフォームされたミニバンの内部だけ。そんな映像を眺めていると、まるで自分も一緒に自然の中でキャンプを楽しんでいるような気分にさせてくれる。また、画面の向こうから聞こえてくるのは、自然の音や生活音、そしてもりこさんが活動している「はぐち」というバンドの曲だけで、それらがやけに心地いい。
この本は、もりこさんがミニバンのN-VANを愛車にするまでのお話や、動画を見ている人には馴染みのあるコーヒーの木箱を手に入れるまでのお話、ソロキャンプでの失敗話や、撮影機材についてなど、動画だけでは知ることのなかったもりこさんのいろいろなお話が、たくさん載っていて読み応えのある一冊だった。

行儀は悪いが天気は良い
/加納愛子
実はAマッソのお二人のことはよく知らないけれど、何度かテレビ番組で加納さんを見るたびに言葉の選び方や話し方がとてもいいな、と思っていた。
尖っているわけじゃないし、卑下しているわけでもない。冷静にその場をズバッと的確に突く短い言葉が、滑舌の良さも伴ってか面白いしわかりやすい。そんな加納さんが本を出版されていると知ったのはこの本ではなく「イルカも泳ぐわい」という作品だったけど、図書館に立ち寄ったある日、この「行儀は悪いが天気は良い」という一冊を見つけたので借りて読んでみることにした。
幼い加納さんから見えた家族の風景、近所のおっちゃんたちの話、貧乏を味方につけた時のこと、お笑いの世界で危ない橋を渡った時。どれもこれも、わたしが加納さんをテレビを見ていて「いいな」と感じたあの雰囲気のままで綴られていて、まるで水をごくごく飲むかのようにあたまのなかにテンポのいい関西弁が染み入ってくる。あまりにもおもしろかったので、わたしは二回も読んでしまった。

婚活マエストロ
/宮島未奈
「成瀬〜」を読んだあと、すでに出版されていた次の作品「婚活マエストロ」も読みたい!とずっと思っていて、このたびやっと読むことができた。
主人公は40歳の独身男性、猪名川健人。のらりくらりと楽な方向に流れていたら、大学生のころから住んでいる小さなマンションから抜け出すことなく、新たな出会いもなく、WEBライターの仕事を細々とこなしていた。ある日、大家からの紹介で婚活パーティーの紹介記事を書くことになり、実際にパーティーにも参加する流れに。そこで見たのは年も関係なく結婚の出会いを求めて参加する男女の姿と、確実にその縁を結んでいく「婚活マエストロ」として有名な鏡原奈緒子の姿だった。
うまく伝わればいいのだけど、ページをめくるとレールに乗ったかのようにスルスルと物語の中を気持ちよく進むことができる本だった。ありきたりとか先が読めるとか、そういう意味ではなくて、心から安心して身を委ねて楽しめる本。ああ、おもしろかった!と、スッキリとした読後感。次の作品も楽しみ。

世界の奇食の歴史
/セレン・チャリントン=ホリンズ
こちらも図書館で借りた本。奇食の歴史なんて、もうわくわくするタイトルでしかない。でも読んでみたらゲテモノ食いとかキモチワルイを全面に出した本ではなく、ちゃんとその時代の人々は何をどうやって食べ始めたのか、前例がないまま人々はどうやって食を開発していったのかが描かれていて、大変興味深かった。また、当時の庶民と貴族の食事の違いや、特に庶民がどうやって貴重なタンパク質を摂っていたのかなども知ることができて、味や風味を想像すると「うっ」と来るものもありつつ勉強になる。
例えば今では普通に食べている缶詰にも、試行錯誤の時代がもちろんあり、食中毒の被害もあって安全に食べられる今に至るわけで、確かに食べ物を長期保存する技術ってとてつもなく大変だっただろうなあと感じた。
個人的には飛べない鳥であるドードーが絶滅に至った経緯が悲しい話だった。あと、カエルの乱獲についても。ちなみに、わたしは台湾でカエルの唐揚げを食べたことがある。それはまるで鶏のせせりのようにプリプリとしていて予想以上に美味しかった。同席していた他の人は「カエル?!」という拒絶の反応だったけれど、わたしは、ただただ食べたことのないものを食べられて嬉しかった。ここで食べなければ日本に帰って食べる機会なんかないぞ、とも思った。あの時のわたしは、ただの好奇心の塊だった。
そんな思い出があたまに浮かびながら、自分自身も含めてつくづく人間というのはどこまでも欲深い罪な生き物であり、またどこまでも探究心が尽きない生き物なのだなあと壮大な考えに辿り着いた本でもあった。