ある日の夜、夕食を食べに行くついでに買い物もしようと、久しぶりに家族でイオンに行くことになった。それぞれのお腹の空き具合がバラバラだったので、フードコートで食べたいものを食べた。美味しかった。
夕食後「食品のお買い物の前にちょっとなんかお店見て来たら?」と、夫が言ってくれたので、買わなければならないものを頭の中で整理しながら一人でイオンの中をぶらぶら歩いた。
まずは近くにあった100均に入った。
何年も自転車につけているワイヤーロックの鍵が最近錆びてきていて、鍵穴も欠けてきて回りにくくなったので100均で買い替えようと思ったのだ。
レジに行く前に、そういえばコイン型のフェイスマスク(普段使用している化粧水を染みこませて顔にパックとして使用できるもの)も、そろそろ無くなるから買わないとな、と、化粧品売り場を探したけれど見つからない。うーん、せっかくだから今日買い足したいのになーと、ウロウロしていたら「あと10分で閉店します」との放送が!
ええ?もうそんな時間?!
このあと、雑貨屋さんも服屋さんも見たかったのに!なんかいい匂いのするハンドクリームとか、キャンドルとか、秋物の小物とかも見たかったのに!!
とりあえずワイヤーロックだけ買って、どうしても行きたかったカルディに走った。愛用している九州の調味料「うまかばい」を、切らしてしまったのだ。ところが、ない。閉店間際に店内をウロウロするのも申し訳なくて、品出しに忙しそうにしている店員さんにも聞けなくて、消化不良のままそっとカルディを出た。
専門店は閉まってしまうが、イオンの食料品売り場はまだ開いている。夫と息子と合流して、夫がお肉売り場を見ている間に、わたしは足早にお菓子売り場にサササッと寄って、お目当ての「チョコレート漬けポテト」と「レーズンチョコ」を探した。パックシートもうまかばいも見つからなかったが、これは売っているはずだ。心ときめく雑貨は見れなかったが、明日は家で温かい紅茶とレーズンチョコでお茶の時間にしよう。わたしの口の中はすでにレーズンチョコの味を思い出してよだれが出ていた。
しかし、見つからない!
夫と息子たちはすでにお肉売り場を見たあと、帰り道の車の中で自分たちの飲みたいドリンクまで選んでいて、わたしを若干せっついている。仕方がない。もう、諦めよう。
でも、どうしても帰り道のドライブのお供は、大好きなコメダ珈琲のチルドカップのがいい!
...しかし、というか、やはりというか。
コメダ珈琲のチルドカップは売り場に並んでいなかった。
やはり、こんな日は欲しいものが何一つ手に入らないようだ。せっかくイオンに久しぶりに来たというのに、手に入ったのはときめきを感じられない自転車のワイヤーロックだけ。
振られ続けた体に、とにかく甘いものを流し込みたかった。初めて見かけたリプトンのチョコレートティーラテを買うことにした。チョコレートラテ、ではなく、チョコレートティーラテというところに不安を覚えたが、まあ大丈夫だろう。心配なのはティーかコーヒーかではなく、今のわたしにとって何より大事なことは、これが甘いのか甘くないのかという一点のみだ!
買い物を終えて車に乗り込みズンと落ち込んでいると、夫に「どうしたん?」と尋ねられた。「何一つ欲しい物が手に入らなかった。わたしにとってイオンとはこの世の全てが売っている場所なのに、裏切られた」
そう答えると「せっかく来てんから、そんなこと言うなよ...」と不満そうだった。確かに夜道に車を運転して家族を連れて来てくれた夫にはいい話ではないだろう。けれど、こんな時のわたしは自分でもいやになるくらいに全方向にわがままなので、夫に気を遣うなんてことも出来やしない。(聞かれたから答えただけやわ!)と、こちらもブスッとしながら、力任せにチョコレートティーラテにストローを差した。ぐいっと吸い込むとびっくりするくらい甘いチョコレートの味が口いっぱいに広がった。
ほう...、これは...!
チョコレートラテならコーヒーの苦みがあったかも知れないが、ティーラテなのでほろ苦さが一切ない。紅茶の味がするか?と聞かれたらしないが、チョコレートドリンクほどくどさを感じることなくスイスイ飲めるのがティーの役割なのかもしれない。
「美味しいー!」とさっきまでドロドロに落ち込んでいた気持ちが吹っ飛んで一気に幸せな気分になった。夫は呆れていた。息子たちも呆れていた。
何を言いたいのかというと、わたしは単純で自分勝手な生き物だ、ということだ。
わたしを不機嫌から上機嫌に変えてくれたもの