わたしがよく行くスーパーには、なんだか気になる店員さんがいる。
彼女の声はとても高いこともあって「○番レジ空いておりまーす!」と、セルフレジを案内する声がよく店内に響くため、店に足を踏み入れると彼女がいるかいないかは大体すぐにわかる。
声は高いけれど、かと言って愛想がいいわけではなく(というか、むしろいつもムスッとしているのだけど)いつお買い物に行ってもお店にいるし、おそらくわたしより少しだけ年下であろう彼女の姿は、わたしにとってホッとする存在で、見かけるたびに心の中でいつもひそかに応援していたのだった。
さて、そのスーパーでは、お盆やお正月など家族が集う大型連休の際に、日本各地の銘菓が売り場に並ぶことがある。売られるお菓子はその時々で多少変わることはあるのだけど、例えば、広島のもみじまんじゅうや、北海道のマルセイのバターサンド、など有名でハズレのない銘菓たちだ。
ある時の大型連休の時に、そのスーパーへお買い物に行ったら、我が家の大好きな博多のひよこまんじゅうと、岩手のかもめのたまごが揃って最後の1箱ずつ並んでいた。かもめのたまごも美味しいけど、ひよこまんじゅうも捨てがたい。どうしよう?ええい、こうなったらどっちも買っちゃう?
…などと、その売り場の前でじっと立って悩んでいたら「失礼しまーす!」と、あの彼女の軽やかな高い声が聞こえたかと思うと、わたしの横から手をスッと伸ばし、ひよこまんじゅうの箱を持ってレジに行ってしまった。ああっ、最後のひよこまんじゅうが!
どうやら、彼女は休憩中だったらしい。レジを終えるとランチバックほどの透明のビニールバックにひよこまんじゅうを入れて、ズンズン歩いてバックヤードへの扉がある通路の方へと消えて行った。
仕方なく、わたしは残ったかもめのたまごを買うことにした。もちろん彼女のことを悪く言いたいわけではない。悩むのであれば、一旦両方カゴに入れてから迷うべきだったのだ。いや、悩むくらいなら、どっちも美味しいのだからいっそ両方買えばよかったじゃないか!などと、自分の詰めの甘さを恥じた。
それより、彼女のひよこまんじゅうの買い方は一切の迷いもなく、むしろ清々しささえあった。休憩中だというのに「失礼しまーす!」と声まで掛けてくれたのだから、食いしん坊の中にも気遣いが見て取れる。無駄と隙のない彼女のひよこまんじゅうへの情熱は素晴らしいものだった。
それから、日が経ったまた別の日。
スーパーのすぐそばにあるコンビニに家族で夜行った時に息子たちが「あ、スーパーの店員さんや」と、小声で言うので、そちらに目を向けると彼女がアイスコーナーにいた。
私服だし、当たり前だけど無言だから全然気づかなかった。お仕事帰りだろうか。彼女はいちごのソフトクリームを4つ手に取り、ひよこまんじゅうの時のようにまっすぐと迷いなくレジへ直行していた。
彼女が店を出てから、思わず息子たちとアイスコーナーに行った。そのソフトクリームはしっかり大きいけれど、その分お値段もしっかりしていて1つ400円くらいする。これまでそれのバニラのソフトクリームは食べたことがあったけれど、いちごのソフトクリームは食べたことがなかった。
…これそんなに美味しいんかな?と、息子たちが気になる様子だったので、せっかくやし食べてみる?と、息子たちの分だけ2つ試しに買ってみた。
家に帰って食べてみたら、これがめちゃくちゃ美味しい!そりゃお高めだから美味しくないと困るのだけど、なめらかなソフトクリームのくちどけと甘酸っぱいいちごの香りが素晴らしいのだ。うーん、さすがだな、とわたしは心の中で彼女に拍手喝采を送った。美味しいものをちゃんと知っている人が働くスーパーは信用できるというものだ。
そして、つい最近のこと。
スーパーで牛乳売り場を歩いていたら、また休憩中の彼女が店内を歩いていた。その手をふと見ると、わたしの大好きなコメダ珈琲のまろやかミルクコーヒーのチルドカップを持っているではないか!
ああ、それ、わたしも大好きなやつ!!と、心の中で叫びながら、もちろん話しかけるわけにはいかないので、彼女が去ってからうんうんと頷いた。そうそう、それ、美味しいよね。やっぱりあの人は美味しいものをよく知っている。というか、ただわたしと同じ甘党で好みが似ているだけか。
それでも、美味しいものを知っている人がいるこのスーパーはやっぱり間違いない。町の小さなスーパーで、売っていないものも多いけれど、わたしはこれからも変わらずずっとここでお買い物をしよう。
そんな風に勝手な誓いを立てつつ、ちゃっかりコメダのミルクコーヒーをカゴに入れて、またぶらぶらと夕飯の献立に悩みながらお買い物を続けたのでした。































